日頃はお喋り好きな奥様に対して、寡黙なご主人。ですが、こと家づくりの話を伺うと「こんな家を作りたい」と熱く語るのはご主人の方でした。そんなご主人の情熱が先行しながら徐々に奥様の希望や子育て目線が加わり、家族の形が実現。完成したのはLDKサイドのスキップフロアが特徴的な、漆喰壁とレンガ屋根の家でした。
自然体の暮らしを象徴する白い漆喰壁の家
――白い漆喰壁が素敵です。最初からこだわられた部分だそうですね。
ご主人：最近は黒ベースのかっこいい系のおうちが多いけれど、僕は白い漆喰の家にしたかったんです。スマートさもいいけれど、それよりちょっとスローなテイストが欲しかった。やはり家は一生物。だからこそ、その理想を叶えるために工務店にも土地にも妥協したくなかったというのがあります。おかげで土地を探すだけで2年かかって何度も心が折れそうになりましたが、粘った甲斐がありました。
奥様：私も家は欲しかったのはありますけど、実際に動くのが面倒で（笑）。でも完成見学会にも引っ張っていってもらえたので、いろんな家を見ることができました。結果、甘すぎずかっこよすぎない、２人で思い描いたシンプルナチュラルなイメージができたと思っています。
――夢が叶ったということですね。漆喰以外で叶えたかった夢や憧れが反映されたところはあるんでしょうか？
ご主人：以前住んでいたハイツは、周りや自分の生活音が気になっていたんです。だから、地下の防音部屋っていうのに昔から憧れはあったんですけど、現実的に考えたら難しいので、2階の窓のない納戸を楽器部屋にして、たまにギターを弾いたり、子どもたちと合奏して楽しんでいます。いつか友達と一緒に演奏したいですね。
スキップフロアでLDKに楽しい変化を
――スキップフロアが印象的ですね。こちらもご主人の発案ですか？
ご主人：はい、雑誌で間取りを見るのが好きで、いろんな間取りを参考に、どこかにわくわくするようなイレギュラーな間取りを入れたいと思っていたんです。ロフトもよかったんですが、結構使い勝手が悪いと聞いて、それならスキップフロアだと。ここで僕は仕事をしてもいいし、子どもたちが宿題をしてもいいし、何に使ってもいい自由な空間として作りました。
奥様：今のところは主に子どもたちの遊び場。でもキッチンにいても様子がわかるのがいいですね。キッチンの対面につけてもらった造作テーブルがあるんですけど、パパは大体そこが定位置になってます。
ご主人：確かに（笑）。お風呂に入って寝るまでの間の読書テーブルにちょうどいいんですよ。すぐ裏の収納の中を照らすためにつけたライトがちょうど読書用にぴったり。ここでの読書が毎晩のリセットタイムです。なので僕自身はまだスキップフロアを有効活用できていませんが、リビングが狭くなっても欲しかった空間なので、すごく気に入っています。
ここで突然ですが…スキップフロアってなに？？
スキップフロアとは、住宅の1つの階層に複数の高さのフロアが設けられた間取りのことです。
部屋や区画ごとに床の高さが違うので、天井の高さも変わるという特徴があります。基本的にスキップフロアの間取りは1つの階層内に短い階段を設置し、フロアごとの高低差を生み出すことで構築します。
スキップフロアでは、壁ではなく段差で空間を区切ります。部屋と部屋をはっきりと分けるわけではないため、空間に連続性がある、つながりを感じる家が設計できるのです。
スキップフロアのメリット３選
①空間が広く使える
スキップフロアを活用すれば、家の中の限られた空間を広く使えるようになります。縦で空間を分けるスキップフロアでは、壁や扉といった横の仕切りを最小限に抑えられます。また、部屋と部屋を離れさせるために廊下を設ける必要もありません。空間が細かく分断されず、つながりのある大きな空間を維持できるため広々とした開放感が実現できるのです。無駄なスペースが省ける分、複数の床ができ、床面積を効率よく増やせます。増えた床面積を活用して、書斎や趣味の空間を作ったり、用途はさまざまです。
②家族の気配を感じられる
スキップフロアは、空間同士が緩やかにつながっています。視線が遮られないのでどこからでも家族の存在を確認でき、一層身近に感じられるようになるでしょう。小さな子どもがいる場合も、掃除や料理をしながらお子様が遊んでいる様子を確かめやすいので安心できます。
③階段下を利用して収納が増やせる
スキップフロアは段差が多く生まれるため、段差を利用した収納を作りやすいことが特徴です。たとえば、スキップフロアをお子様の遊び場とし、その下の階段下を家族の収納スペースにするなど、空間を有効利用しながら収納が増やせます。できるだけ収納を増やしたいという場合にもスキップフロアがおすすめです。
家づくりの費用がかかってしまうことや、バリアフリーではなくなる。といったデメリットもありますが、スキップフロアはデザインのアクセントにもなるため、よりおしゃれな空間に設計しやすいのもポイントなのです。
それでは、インタビューの続きをどうぞ。
日々の動線はとことんスムーズさを重視
――間取りや細かな仕様はどのように決められましたか？
奥様：間取りは決まるまで悩みに悩んだので、何テイクしてもらったか…。自分たちではなかなかアイデアが出ないので、希望を伝えて作ってもらったら、そうきたかっていうふうになって返ってくる。例えば、敷地上、浴室から洗面までの動線が横長になるんですが、そこにトイレをどう入れるかが悩みどころだったんです。それを向きと引き戸で解決した間取りには思わず唸りました。考えていただいた間取りで一番気に入っているのは洗濯動線です。やっぱり毎日の動線は面倒にしたくないですから。洗面室を広く取って天井に干せるようにしてもらったので、洗って、室内で干して、そのまますぐ扉の先に出して、取り込んだら畳んでしまえる。この動線は完璧だなと思ってます。
ご主人：そうですね。細かいところで言うと、アーチ型の垂れ壁は見学にいった家で見て気に入ったのでうちにも取り入れました。子どもがいるとドアを開けるのもいちいち大変だし、どうせ開けっぱなしにするからドアはいらないだろうと。
――住まわれて3年。時間の経過で見えてきたことはありますか？
奥様：私はやはりキッチン周辺にいる時間が長いんです。だから、ここからリビングにデッキ、スキップフロアも目が行き届くのがいいですね。唯一ドアで区切られた洗面室にいても、造作窓越しにリビングを覗けるんです。常に子どもたちの様子を見ておけるのは安心です。それに、その窓のあるランドリールームのカウンターは、洗濯物を畳む作業台になるだけでなく、子どものお風呂上がりに拭いてあげるにもちょうどいい高さ。その目的で作ったんではなかったんですが、かがまなくて拭けるのですごく楽です。
ご主人：住宅地の一番奥なので比較的自由度が高くて人目にもつきにくいし車通りがないので子どもの安心して遊ばせられています。
夏が近づくとウッドデッキの上でプールを出して遊ぶことが多くなりますが、デッキだと屋根があるのでサンシェード要らず。混合水栓をつけてもらったので、水を張るのもおっくうではないですね。
奥様：それにデッキはリビングのすぐ先。遊んでる姿が常に見られるので、その間に家事が進められて助かってます。
家族の思い出とともに
――よく見るとあちこちに家族写真があって、思い出を大事にしてらっしゃるのがわかります。
奥様：飾り棚がたくさん欲しかったんです。いずれ猫を飼ったらキャットウォークにもできるように高さの違う棚を作ってもらったりもしました。でもつい飾りすぎる性格なので、気づいたら写真だらけ（笑）。どれも思い入れのある写真ですし、これからもっと思い出が増えていくのも楽しみです。例えば、子どもたちと外で一緒に水遊びしていると、ここに犬がいたらって考えるとわくわくしますよね。基本的に動物好き。だから家ができた時からツバメに巣を作ってほしいなと思っていたんですけど、実は3年目にして今年念願が叶いました！ 玄関ポーチのところに作り始めた時から、巣立つまで毎日「卵産んでるね」「今日は目が開いたね」って子どもと様子を見守ってました。
ご主人：そんな風にここでの思い出が増えていくのが嬉しいですね。建てる相談をしていた頃は３人家族だったのが４人になり、今は本当ににぎやか。怪獣が２人いるのでリビングの無垢床も傷だらけだし、壁もおもちゃの車で漆喰が削られてますが、それはそれ。子どもが大きくなったら細かいところを補修していけばいいかなと思っています。そういうメンテナンスができるとことも漆喰の良さ。外観も含めてこの白い漆喰が気に入っています。
